黒森神社と権現様標高330メートル余りの黒森山は、宮古市街地の北側に位置し、かつては、その名が示すように一山が巨木に覆われ欝蒼として昼なお暗い山であったという。山頂に大きな杉があり、宮古湾を航海する漁業者などの目印(あて山)ともなったことから、陸中沿岸の漁業・交易を守護する山として広く信仰を集めてきた。黒森山麓の発掘調査により、奈良時代(8世紀)のものとされる密教法具が出土し、黒森山が古代から地域信仰の拠点であったことが窺われる。黒森神社は近世(江戸時代)までは、「黒森大権現社」などと呼ばれ神仏習合の霊山であった1334(建武元)年の鉄鉢(県指定)をはじめ、1370(応安3)年からの棟札が現存し、歴代藩主によって手厚く守護されてきた。権現様(獅子頭)は、南北朝初期と推定される無銘のもの、1485(文明17)年のものをはじめ、20頭が「御隠居様」として保存されている。黒森神楽の起源や巡行の始まりは不明であるが、1678(延宝6)年には現在のような範囲を巡行していたことが、盛岡藩及び地元の古文書で確認できる。
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