宮古市指定天然記念物 チョウセンアカシジミ

更新日:2024年12月23日

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チョウセンアカシジミについて

羽がオレンジ色で白い斑点があるチョウセンアカシジミが緑色の葉にとまっている写真

チョウセンアカシジミ

 チョウセンアカシジミは、その名前のとおり朝鮮半島で最初に発見されたシジミチョウ科のチョウです。シジミというのは、しじみ貝が開いた状態の形や大きさに似ているチョウの仲間のことで、アカシジミとは小さな赤いチョウという意味です。
 国内では、岩手県、山形県、新潟県の一部にしか生息していません。岩手県内では、えさとなるトネリコが連続して生えている沿岸北部の久慈市から宮古市にかけて、内陸部の滝沢市、雫石町に生息地が点在しています。宮古市では田代川・神田川・摂待川の流域で確認されています。
 チョウセンアカシジミは、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種2類とされ、岩手県版レッドデータブックではBランク(絶滅の危機が増大している種)とされています。

チョウセンアカシジミの保護活動

 チョウセンアカシジミは、日本でも東北地方の限られた地域にしか生息しないという希少性から、乱獲によって絶滅が危惧される事態になりました。岩手県では田野畑村、岩泉町が相次いで天然記念物に指定して、その保護に乗り出しました。宮古市では、旧田老町が昭和59年1月23日に指定をし、旧宮古市は昭和61年7月1日に天然記念物に指定して、保護活動を展開してきました。

チョウセンアカシジミの一年

 7月の上旬から下旬にかけてトネリコの幹に産み付けられた卵は、数週間で幼虫になりますが、そのまま卵の中にいて夏から冬と9ヶ月過ごし、翌年の4月中旬から下旬の桜が開花し始める頃にふ化します。卵から出た1令幼虫は、暖かくなってふくらみかけたトネリコの芽に食い入って中で成長します。そして、3回の脱皮を繰り返し、6月上旬に木をおりて近くの石の下、木片のかげ、落葉の下などでさなぎとなります。6月下旬から7月上旬にかけて成虫となり、羽化(さなぎから出てチョウになること)します。羽化は午前中に行われることが多く、8時前後にもっとも多くみられます。
 チョウセンアカシジミの開張(羽をひろげた大きさ)は3.5センチメートルから4センチメートルです。メスのほうがオスよりも少し大きく、卵を持っているためお腹が太いです。羽化したチョウセンアカシジミは、それから3週間の間に交尾を行い、メスは産卵をして1年の命は終わります。

木の幹の部分にクリーム色の小さい粒状の卵が複数産み付けられている写真

チョウセンアカシジミの卵

穴のあいた葉の裏に葉の色とよく似た緑色の幼虫がくっついている写真

チョウセンアカシジミの幼虫
(チョウセンアカシジミの会 小池 聡氏撮影)

枯れ葉に茶色い楕円形のチョウセンアカシジミのさなぎがくっついている写真

チョウセンアカシジミのさなぎ
 (チョウセンアカシジミの会 小池 聡氏撮影)

トネリコについて

 チョウセンアカシジミの幼虫が食べるのは、トネリコという木の葉だけです。
 トネリコにはいくつかの種類がありますが、チョウセンアカシジミの幼虫は葉が広くなるデワノトネリコしか食べません。デワノトネリコは、地元ではアオダモ、ヤチダモ、モエブト、タモノキなどと呼ばれているようです。
 この木が無くなるとチョウセンアカシジミは生きてゆけなくなります。市内では雄又峠より南には生えていないために、チョウセンアカシジミの分布が限られているのです。

参考文献

  • 宮古市教育委員会 『広報みやこ ふるさと博物館 宮古文化財事典』 2010年
  • 宮古市教育委員会 『みやこの文化遺産 指定文化財ガイドブック』 2010年

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