木の博物館/分館8号 治山の森
概要
北上高地の風衝荒廃地

北上高地の標高800メートル以上の山頂近くの西向き斜面には、古くから風衝荒廃地が広く存在しました。この原因は、少雪寒冷・強風という厳しい気象条件と粗放な牛馬の放牧利用とされています。昭和51年の県の調査により、この種の廃地が北は岩泉町から南は遠野市まで、約340ヘクタールあるとされました。川井地域にも国有林約15ヘクタール、民有林約34ヘクタール、あわせて50ヘクタール近い荒廃地がありました。その後、県や関係森林管理署が復旧に力を尽くし、復旧緑化に努め、現在は3分の1以下に減少しました。この場所も治山緑化成功事例の一つです。
荒れ地を緑にするまでに

この場所は、宮古市と岩泉町境にある害鷹森(1,305メートル)の南西斜面に位置しております。復旧前は写真に示すように、地表面は砂漠に覆われた裸地で、風水による表面侵食を激しく受け、一部には深い溝が発生してました。復旧工事に取り組む前に、この場所の自然環境調査を行い、復旧のための土木的工事を先行し、このあと植生を導入する緑化工事を図の様なフローで行ったのです。深く削られた溝には治山ダムや土留工を施工し、裸の斜面に草種子付きむしろの被覆による早期緑化、防風工(板冊)施工によるカラマツやダケカンバなどの苗木植截がされています。
施工から現状まで
この工事は、県営民有林治山事業の一環で、平成5年度から12年度まで継続されました。この間、立地条件が厳しいことから、部分的に緑化が思うように進まず、補修作業を繰り返されたのです。施工から10年以上経過して、漸く森に復元する兆しが見えています。とくに、植栽されたカラマツは良く成長しており、防風工の高さを大きく超えるようになりました。これからも保育管理に留意して、成林するように誘導しなければなりません。樹冠が閉鎖した後は、除伐・間伐も必要になります。破壊された場所を、元の緑に戻すには多額の費用と労力が必要であり、未然に防止できれば望ましいことです。

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更新日:2024年12月23日