木の博物館/分館15号 林間ワサビの森

更新日:2024年12月23日

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概要

国道340号線の近くでカラマツが生えている範囲とワサビの森への入口が載った地図のイラストの画像

林内で山菜や薬草等の農作物を栽培する農林複合経営の試みは、日本だけでなく開発途上国でも広く行われています。とくに熱帯地域の途上国では直面している食糧の増産、森林の保全と再生、地域住民の生活安定のために盛んに実施されています。
この「林間ワサビの森」も永年作物であるカラマツと畑ワサビを組み合わせたもので、宮古市の風土に根ざした農林複合経営です。
日本料理の香辛料として欠かすことの出来ないワサビは、元来深山の澄んだ渓流のほとりに自生している日本原産の多年草です。ワサビ(Wasabi japonica)は直射日光を嫌い、夏は涼しく冬は比較的暖かくて、土壌中の水分が多く、しかも排水の良好な有機質の腐植に富んだ場所を好む耐陰性を有する多年生植物です。
ワサビにとってカラマツ林の存在は、その生育に良好な環境をもたらし、またカラマツにとっても林床でワサビを栽培することが、上木の成長にとっても良い影響をもたらすので、経済的にもプラスとなる農林共存の施業であるといえます。
共生の効果として、ワサビ栽培にとってカラマツ林の存在は(1)直射日光からの保護、(2)夏期の昇温抑制、(3)空中湿度の保持、(4)冬季低温による寒害防止、(5)落葉による越冬ワサビの保護です。一方、カラマツ林に対するワサビ栽培の効果として(1)日射量調節のための除間伐の実施、(2)林床を覆っているササや雑低木の除去、(3)耕起による土壌物理性の改善、(4)ワサビに対する施肥によるカラマツへの肥培効果をもたらし成長促進が図られること等々あります。この他に林業経営者にとって造林後50年以上経過しなければ得られない立木の伐採収入を待たずに、中間において収入が得られるというメリットは大いに期待されています。
カラマツ林とワサビ栽培の複合経営にとって、カラマツ林の林内照度を間伐によって調節することが必要です。当分館ではワサビの生育期である5月から10月までは70%の相対照度になるように間伐をすることとしています。

カラマツのみ育成した場合とカラマツとワサビをともに育成した場合の違いを比較したイラストと、まっすぐに伸びた背の高いカラマツの木々の間の地面に植えられた畑ワサビの写真

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